最近、物忘れがひどい、紛失物が多いなど、あれっ、ひょっとして...と思ったことありませんか?認知症は、脳が病的に障害されておこります。その原因となる病気は、頭蓋内の病気によるもの、身体の病気によるものなどたくさんあります。しかし、多くは「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」です。なかには、原因となる病気を適切に治療することで認知症症状が軽くなるものもあり、それらは認知症全体の約1割を占めているといわれています。
認知症の症状は、中心となる中核症状(必ずみられる症状)と、それに伴って起こる周辺症状(必ずみられるとは限らない症状)に分けられます。中核症状とは「記憶障害」や「判断力の低下」などで、必ずみられる症状です。周辺症状は人によって差があり、怒りっぽくなったり、不安になったり、異常な行動が見られたりすることがあります。
認知症を引き起こす病気はさまざまで、その数なんと70種類にも及びます。中でも「アルツハイマー病」と「脳血管障害(脳梗塞など)」による認知症は多く、これら2つの混合型もあわせると認知症全体の約8~9割を占めます。
残念なことに患者数の多い「アルツハイマー型認知症」や「脳血管性認知症」については、今のところ完全に治す方法がありません。ただ最近では、周辺症状に効果のある薬が多く開発され、これによって症状を上手くコントロールし、それなりに落ち着いた日常生活を過ごされる方々も増えてきました。
認知症の薬物療法は必ず見られる症状(中核症状)に対する治療、またウツや不安、幻覚、妄想、暴力行為、睡眠障害などの周辺症状に対する治療の2つに分けることができます。
中核症状 | 認知症の中でも、アルツハイマー病とレビー小体病は、脳の神経伝達物質「アセチルコリン」が不足するため、その減少を防ぐ作用のある薬剤「アリセプト」を用います。その結果、障害されていない神経細胞が効率よく機能するようになり、障害された神経細胞の働きを補ってくれるのです。なお、アリセプトは半年~1年ほど進行を遅らせる効果があるとされていますが、進行を止めるものではありません。また、吐き気や嘔吐、食欲低下、怒りっぽくなるなどの副作用が現れることもあるため、薬に慣れるよう段階的に量を調節した処方がなされます。 |
周辺症状 | 幻覚や妄想、焦燥、興奮、攻撃性(暴力行為など)に対しては抗精神病薬、不安や苛立ちなどに対しては抗不安薬、不眠や昼夜逆転などに対しては睡眠薬が処方されます。また、うつ症状に対しては気分や意欲に関わる神経伝達物質「セロトニン」や「ノルアドレナリン」を選択的に活性化させる抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)が有効です。なお、最近では抗精神病薬や抗不安薬に比べて副作用が少ないという点から「抑肝散」などの漢方薬が注目されており、これは主に周辺症状である興奮や焦燥感を改善するとされています。 |